リーファー・コンテナ(鉄道コンテナ)

日本国内の鉄道貨物独自の冷凍機付冷凍コンテナの仕様には、

外部発電機から電気ケーブルで給電する電動機付冷凍コンテナ

「集中式クールコンテナシステム」(以下「集中式」)と、

コンテナ個々に独立装着した小型発電機で直接給電する

ディーゼルエンジン付冷凍コンテナ「分散式クールコンテナシステム」

(以下「分散式」)がある。

集中式

集中式での鉄道冷凍輸送は、1988年から関東 ~ 北海道区間の限定輸送で始まった。

この方式で使用する冷凍コンテナは冷凍機が電動機駆動のため、電源が必要である。

しかし通常の貨車には電源装置がないため、予備発電機を搭載した二重系統仕様の

発電専用電源コンテナ(G30A形・ZG形)を積んだ貨車の前後を、電源供給用引き通し

電気ケーブルを設けた貨車で挟む形で積載する集中式が開発された。

後記する国鉄時代からすでに運用されていた分散式では、当時の機器類の耐久性問題や

自動運転技術の未熟さ故に、長距離輸送の際には途中停車駅で多少の点検はあるものの

それ以外は乗務員の目に触れないため、万一発電機停止などのトラブルがあれば

積荷が変質するなどのおそれがある。

また、自然災害などによる輸送障害時に予定外に長時間臨時停車するときには、

各冷凍コンテナ搭載の発電機に燃料油をコンテナ毎に追加給油するなどの手間もかかったが、

この集中式であればそのような致命的打撃はほぼ免れることができる。

しかし、積載貨車が限定されるのみではなく、輸送トラックにも小型発電機を装備し、

発送者・荷受人両方において三相交流200V工業規格の専用給電設備が必要となるなど、

集中式では運用の自由度が極端に低かった。

さらに貨車に積込・積降し時の付帯する多数の電源ケーブル接続や点検、

機器の設定などの諸作業にも膨大な手間暇がかかった。

このため、登録運用されていた集中式専用コンテナは

日本通運12ftタイプ5t積載UF15A形1000番台および、

20ftタイプ10t積載UF26A形1000番台・全国通運12ftタイプ5t積載UF15A形1000番台および、

20ftタイプ10t積載UF27A形1000番台・西濃運輸20ftタイプ10t積載UF26A形1000番台の、

3社合計約60個程度に留まり、わずか数年で中止されてしまった。

ただし、その後にJR貨物仕様の集中式クールコンテナシステムとは別に

国際海上冷凍コンテナのみを対象として、

関東(神奈川県/横浜本牧駅)~ 東北地区(宮城県/仙台港駅)への新ルートを新たに開設し、

現在に至っている。

しかし、平成22年3月ダイヤ改正により廃止されてしまい、

これにより国内で唯一残っていたこの輸送方式は、事実上、姿を消してしまった。

なお、一度の輸送個数が数個程度のために、従来の電源コンテナ(G30A形・ZG形)は一切使用せず、

新たに中村荷役所有の私有2tタイプの電源供給用専用電源コンテナG8D形を5個新規に製作し、

この電源コンテナから給電している。

分散式

そこで集中式の欠点を解消すべく、既に国鉄時代に試作的に開発されていた各コンテナに

独立した小型ディーゼルエンジン発電機を搭載して、冷凍機を駆動する分散式が

再認識され本格的に導入された。

先ず前記述の集中式がまだ開発・運用されていなかったJR貨物移行初期に、

国鉄時代に運用していたコンテナに発電機を固定装着した20ftタイプ10t積載のUR5形や、

JR貨物以降にそれまでの実績を引き継いで新開発された12ftタイプ5t積載のUF15A形などが

大量投入された。

しかしその後に登場した集中式との兼ね合いで一時期増備が止まっていたが、

集中式の終焉が色濃くなる頃より新たに登場した新形式UF16A形と共に再び大量増備が始まり、

その他にも20ftタイプ10t積載、31ftタイプ10t積載など多くの新形式が続々と大量に登場し、

現在国内で流通しているJR貨物指定の鉄道私有冷凍コンテナは、すべて分散式で運用されている。

この方式だと、貨車やトラックに発電機を積む必要が一切なく、

コンテナ内部の温度センサーでの完全自動運転により、発送者から荷受人に渡るまで

最大約100時間程度の無給油連続運転輸送ができる。

ただし、これらの機器を組み込むためのコンテナ側面スペースの関係から発電機は1台のみで、

集中式のようなシステムの冗長性は一切ない。

また、発電機設備が12ftタイプUF15A形・UF16A形の場合は、

非常に狭いスペースに押し込まれているので、発電エンジンの高温排気熱や激しい振動に

長時間晒されており、日頃のメンテナンスが重要になってくる。

これを怠ると発電停止による積荷の変質事故のみならず、最悪は走行中に火災を起こし

コンテナ本体や貨車、周りの環境に多大な被害を及ぼすことになる。

なお、近年では連続運転時間に問題があったり冷凍機器の故障が多いUF15A形の廃棄が

急速に進んでいる。

変わった使用方法

リーファー・コンテナの変わった使用方法としては、

冬場の寒冷地で特に凍結等を嫌う各種物資を凍結防止に、

保温目的で使用する場合もある。

この輸送方法は、鉄道での冬場の北海道向けJR貨物用冷凍・冷蔵コンテナ輸送でも

良く用いられている。

また、冷凍機を切ってしまえば”ただの箱”となるので、

季節や単発運用等で特定の地域に偏ってしまった場合にも、

空コンテナとして回送する無駄な費用を抑える為に通常のドライコンテナと同様に、

帰り荷を確保し前項の”保温裏ワザ”以外にも年間を通して、

全国的に冷凍以外の通常貨物も輸送している。

関連項目