コンテナとは

コンテナ (Container) とは、内部に物を納めるための容器である。

貨物輸送に使われる大型の物のほかに、人間が持ち運べる小型の箱もコンテナと呼ばれるが、

本項目では貨物輸送用に使われる大型の物について記述する。

一般的には、鋼鉄・アルミニウムなどで製造され、規格化された形状の箱で、

その中に輸送物を積み込み航空機・鉄道・トラック・船舶などで輸送を行う。

多くが直方体の形状であるが、丸みを帯びた筒状の円筒形や、

機体に合わせた逆台形の航空貨物用などの例外的な形状もある。

規格化されているために、規格に対応した船や鉄道、トレーラーなど

異なった種類の輸送手段の間で積替えが可能であり、

これらの相互の積み替えが簡便に行なえるため、

工場で荷を詰めたコンテナをそのままトレーラーで運び

コンテナ船や貨物列車に載せて、再度トレーラに載せて倉庫や店舗へ

配達することができる。

コンテナ荷役は機械化されているため、荷役の手間・コスト・時間を

大幅に削減でき、また盗難や汚損の危険も小さくなる。

世界で最も一般的な貨物コンテナは、

大きさなどの規格がISOによって国際的に統一されている「国際海上貨物用コンテナ」

(Shipping containers または、Isotainers)と呼ばれるものである。

また航空機での運搬用に、海上輸送用のコンテナとは別規格で

国際的に統一されている貨物コンテナがある。

従来から日本国内で使われているのは、

旧日本国有鉄道時代から鉄道貨物の輸送用に採用して、

「戸口から戸口へ」のキャッチフレーズで宣伝していた鉄道貨物用コンテナであるが、

これは日本の独自規格である。

コンテナの種類

海上コンテナ

ISO規格での海上コンテナの長さは、

主に20フィート (6,096mm)、40フィート (12,192mm) の2種類がある。

幅は8フィート (2,438mm)、高さは8フィート6インチ (2,591mm) だが、

9フィート6インチ (2,896mm) のハイ・キューブ・コンテナ(背高コンテナ、クンロクとも

呼ばれる)も普及している。

なお、長さが45フィートタイプのコンテナも近年では新たにISO規格化され、

欧米などで普及しつつあるが、それを積載したシャーシが日本国内の公道を

極一部の例外(別記、ボーイング社部品輸送)・(別記、物流改善研究の試験輸送)・

(別記、みやぎ45フィートコンテナ物流特区輸送等)を除き、現在の道交法下では走れない。

このために日本で見かけるのは、港に海外から寄港したコンテナ船上での積載状態の風景か、

これ等のコンテナ船が接岸中にコンテナ荷役作業の都合で、一時的に船上から降ろし

隣接するヤード内で仮置しているなど、ごく限られた条件下の場合である。

海上コンテナの最大総重量(自重も含めたコンテナ全体の制限重量)は、

20フィートタイプでは17,950~20,320kg、

40フィートタイプでは26,770~30,480kgである。

海上コンテナの自重 (Tare Weight) は、ドライ・コンテナで20フィートタイプが約2,300kg、

40フィートタイプが約3,800kg。

リーファー・コンテナで、20フィートタイプが約2,800kg、

40フィートタイプが約4,200kgである。

なお、海上コンテナの自重は、製作するメーカー及び、材質により若干異なる。

海上コンテナの種類

ドライ・コンテナ

ドライ・コンテナ (dry container) は、身近な生活物資から工業製品・産業物資まで、

大多数の一般貨物に幅広く利用され、日本国内では有蓋コンテナとも呼ばれる。

ただしドライ・コンテナ輸送ができない例外品としては、

液体・粉体・気体類などの状態で、それらの貨物を輸送する時の情況や事情で、

事前に小型容器(ガスボンベ・ドラム缶・小型タンク類)などに小口分割して準備することの

できない貨物の他、専用の管理設備・機器が必要な要温度管理品、大物品、生物などが

あげられる。

ドライ・コンテナの形状は箱型トラックの荷台部分のような細長い箱型で、

コンテナの基本タイプとして世界で流通しているコンテナの中では圧倒的多数を占める。

大きさのサイズとしては多岐に渡るが、

当然ながら流通するその国々の事情に見合ったサイズが主流となる。

日本国内では主要先進国に比べ道路事情や各種規制により運用制限が多々あるために、

長さ20ft、40ftタイプがほとんどであるが、

稀に10ftおよび日韓・日中間の輸送用として近年では12ftタイプも流通している。

また、原則的に公道は走行できないが、神戸・名古屋などの特定地区の港では

超背高コンテナも存在している。

(詳しくはハイ・キューブ・コンテナを参照)

積み込み口は後部片妻一方開きタイプが基本であるが、

片側または両側面が全面折戸式に開くタイプや

片側または両側の一部分に開口戸があるタイプなど、

積荷や作業環境に応じた特殊なタイプも少数ながら存在する。

なお、基本的には床以外には内張りも簡易な通風孔も全くないために

外気温の影響を受けやすく、

外気との温度差により積荷に水滴などが付き変質したり、

特に夏場などは内部の温度がかなり高温になるなど、

輸送中の気温変化に対する充分な対策と配慮が必要となる。

また、通風孔がないことが構造区分コードにより明確に区分されている。

簡易ベンチレーター付きドライ・コンテナ

用途としてはドライ・コンテナとほとんど変わりはないが、

コンテナの側面上部の端に小さな縦長型の簡易通風孔が

複数個取り付けられたタイプのコンテナである。

しかし、その能力はベンチレーター・コンテナと比べて非常に低いため、

ドライ・コンテナ同様、輸送中の温度変化に対する充分な対策と配慮が必要となる。

また、通常型のドライ・コンテナとは構造区分コードにより明確に区分されており、

ハイ・キューブ・ドライコンテナでも同様である。

なお、いずれのタイプにも共通して、

簡易通風孔からの異物・密輸品等の投入防止の保安対策規定として、

コンテナ製作時や修理時において簡易通風孔の網目口径・網目の材質・強度および、

取り付け加工方法などが別途、厳格に定められている。

ハイ・キューブ・コンテナ

ハイ・キューブ・コンテナ (high cube container) とは、

標準的な高さである各種8ft6inコンテナより更に背の高さが1ft(30cm)高い、

9ft6inコンテナのことである。

一般的には背高コンテナとも呼ばれているが、

日本国内の荷役従事関係者では、9ft6inにちなみ、「クンロク」とも呼ばれている。

(これに対し、通常型の8ft6inコンテナは「ハチロク」と呼ばれている)

したがって、荷役中や一般道での輸送中に高さにおける注意喚起のために、

側面やドアに注意書きが上部に黒と黄色の警告色によるステッカーが貼られている。

このハイ・キューブ・コンテナが生まれ、

世界中では無論、道路の高さ制限が多い日本国内でも

このコンテナが全国規模で輸送できるように、莫大な国費を費やして

日々道路整備をしている背景には、今日の流通経費の削減等の

根強い要望があるためである。

例えば、軽量品貨物を従来の8ft6inコンテナへ一杯に詰めても

最大積載重量を大幅に下回ることが多いことから、

少しでも多くの貨物を合法的に積載するために開発された。

積み込み口は後部片妻一方開きタイプが基本であるが、

片側または両側面が全面折戸式に開くタイプや、

片側面の一部分に開口戸があるタイプなど、

積荷や作業環境に応じた特殊なタイプも少数ながら存在する。

日本国外では早くから広範囲に普及していたが、

日本国内では道路交通法による高さ制限等の問題で普及していなかった。

しかし、法令改正による道路環境整備や運搬シャーシ及び牽引トラクタ等の

規制緩和で急速に増え、ドライ・コンテナ、冷凍コンテナに多く見られる。

また、日本国内に流通している各種のハイ・キューブ・コンテナは

流通コストの関係で、ほとんどが40ft型であり、20ft型はまれである。

特殊な事例としてボーイング747の翼などの部材を、ボーイングの工場がある

ワシントン州シアトルへ輸送するための全長20ft型、40ft型、45ft型などの

コンテナをベースとして、高さが約17ftと通常の二倍に相当する超巨大コンテナも

米ボーイング社の協力会社である川崎重工業・三菱重工業各社にて

地区限定で流通している。

これらの輸送は、ウエストウッド・シッピングラインが担当する。

リーファー・コンテナ

リーファー・コンテナ (Reefer container) は、

生鮮食品・冷凍食品・生花や低温輸送が必要な化学製品、医薬品、電子部品、

フィルム、美術品などの輸送のためのコンテナであり冷凍コンテナとも呼ばれる。

コンテナ内部に外部電力給電式の冷却・保温ユニットを備え、

+20℃から-25℃程度までの冷却と保温が可能であり、

このコンテナのドアは基本的には短辺片側に1つだけ設けられている。

また、稀に運用先での外部電力供給が不可能等の事情に合わせた、

ディーゼルエンジン発電機搭載式と従来の外部給電式の併用タイプもある。

日本国内での運用には、長さ20ft級コンテナでは大多数が高さ8ft6in型で、

9ft6in背高タイプはごく稀である。

しかし、長さ40ft級コンテナでは9ft6in背高タイプが

近年の日本の道路交通法の緩和と、経済性から多用されている。

特殊タイプとして少数ながら、

コンテナに設置してある特殊な通気孔を通して外部機械より

冷気を循環させて冷却する機械脱着式冷凍用コンテナや、

2組の完全に独立した冷却装置を両妻壁側に備えて信頼性を高めた

「ダブルユニット型」または「ツインユニット型」と呼ばれるタイプがある。

この2組搭載型は万一、片方の冷却装置が故障しても、

もう一組の冷却装置がバックアップし、化成品・特殊原料・精密機器など

積み込みから積み出しまでの間も、一貫して一定温度に保つ必要性が

特に高い積載貨物に用いられる。

なお、このコンテナの積み込み口は長手方向の片側または、両側に設置してあり、

日本国内では、長さ20ft級・高さ8ft6in型での運用が数社で確認されている。

サーマル・コンテナ

サーマル・コンテナ(Thermal container)は、

日本では冷蔵コンテナ・保温コンテナ・断熱コンテナとも呼ばれている。

断熱材で覆われたコンテナ本体には冷却・加温ユニットの機械的装置が一切なく、

コンテナの内部温度に関しては特に規定がないので、

通常はすでに予冷や加温された貨物をそのまま積み込み使用したり、

事情によっては寒冷地で凍結を嫌う貨物を輸送する場合などにも利用される。

その他、ドライアイス・炭酸ガス等の冷媒を詰め込み冷却する特殊なタイプもある。

日本国内での代表的な一例として、

輸入冷凍マグロ輸送に長さ40ft・9ft6in背高タイプの運用が確認されている。

ハンガー・コンテナ

ハンガー・コンテナ (hangar container) は、

ドライ・コンテナと同じ外形をしたコンテナの内部にハンガーを

かけられる取り外し可能なパイプ状のラックが多数備わっており、

コンテナ内部が絨毯で保護されている場合もある。

このため空になった後にコンテナの有効活用と、空コンテナをわざわざ

回送割引運賃が適用されない正規の運賃を払って送り返す(ただし、JR鉄道輸送では、

空回送鉄道運賃が最大5割引[以前は9割引だったが改定された]となる) という

諸経費の無駄を省くための工夫が必要となる。

例えば、空回送冷凍コンテナなどでよく使われる輸送方法である、

雑貨物資を帰り荷物として詰め込むことが考えられるが、

内部が絨毯で保護されているなどの場合、多大な手間隙かけてコンテナ内部に

ビニールシート類を敷き詰めて、荷物の汚れが直接付かないようにするなどの、

ある意味で使用用途が限定されるコンテナである。

しかし衣類を畳まずに吊るした状態で輸送することができるので、

商品の折れ傷み防止や積載品数の増加、梱包資材の節約、

更には出荷時に納品先の店舗仕様にあらかじめ札付けの準備をしておけば、

流通中間で一切の手を加えることなくあたかも製造工場から直輸入したようになるので、

これにより商品流通側から見れば経済性向上や荷役労働環境の改善、

流行ものの衣類もスピーディーに仕入れることができる。

なお、コンテナの外観上からは特にhangar container、

または、国内の鉄道コンテナで見られるハンガーコンテナなどと、

特段の表記がない限り見分けることは非常に難しい。

また、1995改定のISO規格コンテナ構造区分コードでは直接該当するコードがないため、

割り当て不能時には便宜的に総括付与する「G9」が使われている。

ベンチレーター・コンテナ

ベンチレーター・コンテナは、

ドライ・コンテナにベンチレーター(通風装置)を取り付け、

コンテナ内部の空気が常に換気されるように工夫されたコンテナで、

日本では通風コンテナとも呼ばれる。

野菜や果物・植木等の樹木など、輸送中に換気が必要な物資の輸送に使用される。

換気方法としては、コンテナ側面へ無数の網目状の通風孔を帯状に上下に取り付けた

「自然換気型」と、強制的に換気する「機械式換気型」のタイプに、

コンテナ構造区分コード上でも区別されている。

なお、いずれのタイプにも共通して通風孔からの異物・密輸品等の投入防止の

保安対策規定として、コンテナ製作時や修理時において通風孔の網目口径・

網目の材質・強度および、取り付け加工方法などが別途、厳格に定められている。

タンク・コンテナ

タンク・コンテナ (tank container) は、

油類、化成品、各種ガス、濃縮果汁、原酒、食品原料などの

液体や気体を輸送するためのタンクを備えたコンテナである。

洗浄技術の向上によりさまざまな用途に転用でき

効率的な運用を図ることができることから

ISO規格長さ20ftのものの普及が急速に進んでいるが、

特殊化成品や各種ガスの小ロット輸送用の長さ10ft型および、

ヘリウムガスなどの各種軽量ガス輸送用の40ft型も存在し、

日本国内でも部分的に運用されてきている。

用途により様々なコンテナ外観・タンクの高さ・口径種類の他、

積荷により加温・保温機能や荷役設備などの、各種装置を備えている。

なお、外観は20ft型および、40ft型のタンク・コンテナなるも、

積荷は粉末状、または、粒状の穀物・化成品・鉱物・食品などを

専用に運ぶコンテナも存在するが、液体状ではない乾燥した粉末や

粒状積荷の場合は、コンテナ構造区分コードでバルク・コンテナ

(ホッパ・コンテナともいう)となる。